
佐世保市の早岐。ここで会社員とワインバーの店主という二つの顔を持つまどかさんは、日々、忙しくも充実した時間を過ごしています。
6年前、東京から生まれ故郷である早岐へと戻ったまどかさん。現在は家業である保育園の運営を手伝いながら、2023年11月には自身のライフワークとなるワインバー「wine madu」をオープンさせました。


早岐はJR佐世保駅からわずか3駅。博多方面からも電車が通っており、交通の便に恵まれています。斜面が多い佐世保市においては珍しく、平地が広がる貴重な地域で、近年は人口も微増傾向にあります。

かつては商店街に本屋やレコード店、スーパーが立ち並び、まどかさんが18歳まで暮らしていた頃には、多くの人で賑わっていたといいます。しかし現在は、高齢化や車社会への変化により、少しずつ静かな町へと変化しつつあります。
それでも「今も早岐には前向きでポジティブな人が多い」と、まどかさんは語ります。地元で店を営む人々とイベントを企画するなど、新たな動きも頻繁に生まれています。取材の日も、フレンチレストラン「Meme」、はちみつカフェ「オリーブハニー」との三者合同イベントの打ち合わせが行われていました。「食をきっかけに、人が集まり、交流が生まれる場をつくりたい」…そんな想いが共有されていました。
大学進学を機に山口へ移り、学生時代は化粧品の販売でアルバイト。卒業後は郡山、小倉と移り住み、大手化粧品メーカーに就職。大阪・福岡・東京など全国を転勤しながら販売の現場を経験し、その後は人材育成部門へ。多くのスタッフの教育に携わる中で、「40歳での独立」を目標に、着実にキャリアを積み重ねていきました。
そして、ネイルサロンの経営や企業研修の講師として、予定通り独立を果たします。
そんなまどかさんが早岐へ戻ったのは、親孝行のためでもありました。実家の保育園を手伝うことになり、運営事務を担う一方で、「もう一つ、自分らしいライフワークが欲しい」と感じていたといいます。
ある日参加した「人生100年時代の生き方セミナー」で、自分の人生を棚卸しした時、改めて“人との交流が好き”だということに気づきました。元々ワインが好きだったこともあり、「ワインを通じて人がつながる場所をつくりたい」と、ワインバーの構想が芽生えます。
2023年、知人が飲食店を開業するタイミングに合わせ、店舗の一角を借りて「wine madu」をスタート。現在は、佐世保市内の飲食店「灯点人(トンテント)」の奥で営業しています。




二つの異なる業態が混在する店内ではアコースティックライブやDJイベントが開かれることもあり、まさに多様な人々が行き交う“交流の場”となっています。

「今の環境も気に入っていますし、たくさんの人と関われることが嬉しい」と語るまどかさん。一方で、将来的には「自分の空間をデザインしたワインバーを持ちたい」という夢も膨らんでいます。
「早岐って、なんだか面白い町だね」と思ってもらえるような場所をつくりたい。大人がゆっくりと集い、語らい、つながる。そんな“社交の場”を早岐の地に根づかせることが、まどかさんの描く未来です。(取材 久保暁育)
【やりたいこと】
・大人の社交場
・ワインバー
・地元の伝統工芸の職人さんとも出会える場
【取材者がイメージする物件】
・空きビル
・蔵
・元旅館